もてまん
繁徳は家に戻って、シャワーを浴びた。
心地よい疲れが全身を包んでいた。
繁徳はそのままベットに倒れ込むと、いつしかまた眠り込んでしまった。
次に目覚めると、既に時は十二時を回っていた。
(ざまぁないな。運動不足だ)
起き上がった途端、腹が減っていることに気がついた。
繁徳は、急ぎ食堂へ下りる。
(あれっ、珍しい、父さんがいる)
食卓で新聞を広げていたのは、母幸子ではなく、父正徳だった。
「父さん、珍しいな、今日は休み?」
「あぁ、盆休み、一日しか取らなかったからな。火曜日まで四連休だ」
「随分、急だね。母さんと旅行でも行けば良いのに」
「急に休みが取れたんでね。残念ながら、母さんは月曜に抜けられない用事があるんだそうだ」
「俺も明日は用事があるし……
あっ、でも、俺、月曜なら空いてるよ。予備校の夏期講習、後半は火曜からなんだ」
「そうか、繁徳が行けるんなら、久しぶりに釣りにでも行くか?」
正徳が新聞から顔を上げた。
「いいね。ほんと、久しぶりだ」
「手近なところで、若洲海浜公園なんてどうだ?」
「海釣りか……あそこなら、午前中で行って帰ってこれるね」
「そうだな、涼しいうちにひと釣りして、暑くならないうちに引き上げるか。そうと決まったら、父さん、これから釣り具の点検するかな」
正徳が嬉しそうに、繁徳に向かって、釣り竿を振り上げる真似をした。