もてまん

日曜の朝、繁徳は目覚まし時計の音に飛び起きた。

六時。

用意してあったウェアに着替えると、繁徳は朝の日差しの中へ走り出た。

今日は少しペースダウンして走る。

筋トレも復活させて、体力増強をはかる計画だ。

受験も最後は体力勝負。

繁徳は、昨晩ノートに書き留めた筋トレメニューを頭に思い描いた。

腹筋百回、背筋百回、腕立て伏せ百回、それと縄跳び五百回。


(ちょっと、欲張り過ぎだな)


一晩寝て、気持ちは冷静になっていた。


繁徳は基本的に身体を動かすことが好きだ。

小学校ではサッカー、中学では野球、高校ではバスケ。

競技自体への興味より、純粋に身体を動かすことが好きだった。

だから、一人でいる時は、走った。

走ると、自分が空気と一体になるように感じられた。

無になる心、身体を動かしている時は他に何か考える余裕などない。



繁徳はその無の時間が好きだったのだ。
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