もてまん
繁徳は予定のメニューを半分に抑え、八時には、シャワーを浴びて食堂に下りた。
千鶴子の家に行く約束は十時。
(何か腹に入れとかないとな……)
食堂には、幸子がいた。
いつものように、食卓に大きく新聞を広げて眺めている。
「繁徳、随分早起きね」
繁徳の気配に気づいて、幸子が顔を上げた。
「って、もう八時だよ」
「あら、あなた、六時頃から出かけてたじゃない?」
「ごめん。起こしちゃった?」
「なんとなく、目が覚めちゃっただけよ。
走ってきたの?」
「うん。身体なまってさ。
受験も最後は体力勝負かなって」
「そうね。
あなた、以前は毎日走ってたものね。
運動して、お腹すいたでしょ、朝食、用意してあるわよ」
「母さん、気が利くね」
「何言ってんのよ、母親なんだから……」
幸子は、いつになく真面目な顔付きでそう言った。