もてまん
「あんたにしたのとは、少し違うとは思うけどね。
ほら、女同士で分かり合える話ってのもあるだろう」
(なんか、もっとやばいんじゃないだろうか、それって)
金曜の夜の舞を想い出して、繁徳はちょとドギマギした。
「なんだい?
金曜の夜、キスでもしたのかい?」
「えっ」
と、繁徳は唾を飲み込んだ。
(何で判るんだよ。千里眼か?)
千鶴子はどうやら全てをお見通しらしい。
「繁徳は正直だね。顔に〈した〉って、書いてあるよ」
千鶴子は、目の横に一杯皴を作って、嬉しそうに笑った。
(緊張、解けたみたいだな)
千鶴子の前では、キスの一つや二つ恥ずかしがることもない、と繁徳は開き直った。
「舞ちゃんは、いい子だよ。大事にするんだね」
「解かってますよ、言われなくても」
繁徳の生意気な返事にも、千鶴子は全てを見通したように笑っていた。
その時、居間のドアを軽く叩く音がした。
舞が練習を終えて呼びに来たのだ。