もてまん
「でも、先に言っとくが、彼のレッスンは厳しいよ。
それと、あんた達、センター試験は受ける予定かい?」
「いえ、私は今のとこ予定はないです」
「じゃあ、直ぐに用意しなきゃいけないね。
芸大受験にはセンター試験を受ける必要あるんだよ。
何、形だけだけどね」
「あと舞さんは、まずは、そうだね、これと、これと、これ。
この楽譜に目を通しておくように」
そう言うと、千鶴子はピアノの後ろ手にある本棚から、何冊かの楽譜ピースを取り出して舞に渡した。
舞は真剣な顔で、表紙のタイトルを見つめている。
繁徳は呆然と二人のやり取りを遠巻きに眺めていた。
(あっ、そうだ、花束)
繁徳は右手に握りしめていた花束に気が付いた。