もてまん
「あの、俺、先に帰るよ。
これ、舞に。
なんかわかんないけど、舞、兎に角、おめでとう!
素敵な演奏だった」
繁徳は二人に近づいて、花束を舞に差し出した。
「えっ、私に?」
「だって、明日から千鶴子さん旅行だろ?
これは、舞に買ったんだ……」
「変わらぬ愛を誓うってことさ」
千鶴子が嬉しそうに笑った。
「また、千鶴子さん、大げさだな」
「あたし、嬉しい。
シゲ、あたし頑張るよ」
舞は繁徳から花束を受け取ると、そっと匂いを嗅いだ。
「なんか、千鶴子さんのお墨付だと、勇気百倍って感じだな」
「ほんと、力湧いてくるよ……」
舞がちょっと淋しそうに笑う。
千鶴子は舞のそんな表情に気付くと、繁徳の方に向き直った。