もてまん
坂下のマクドナルドは、まだそう混雑していなかった。
「今日は日曜だからな。込むのは一時過ぎからだよ」
繁徳の発した言葉に、舞は廻りを見回し、繋いだ手をそっと離した。
注文を済ませ、二階の大きなテーブルに席を見つけると、二人並んで腰を下ろした。
舞はフィレオフィッシュとポテトとコーラ。
繁徳はビックマックとナゲットとコーラ。
二人して、貪るようパクついた。
「あぁ、美味しかった」
コーラをすすりながら、舞が呟く。
「シゲ、まさかそれでお腹一杯ってことないよね」
「そうだな、とりあえず空腹が収まったってとこかな。
家に帰れば、母さんが何か作ってくれてるからさ」
「シゲも一人っ子だよね」
「嗚呼」
「親の存在がうるさいなって感じること、ない?」
(おいおい、何の話だ?)
少し違和感を感じたが、舞の真剣な眼差しに、繁徳は真面目に言葉を返した。
「家の親は放任だからな。
母さんは兎に角、子供はひもじい思いをさせずに置けば安心って感じ。
あんまりうるさい事言わないし」
「そっか、いいな……」
舞の瞳がじっと繁徳を覗き込む。