もてまん
「家はさ、特に母親が、過干渉っていうか、私の行動を全て把握してないと気がすまないって感じなの」
「うわぁっ、そりゃ凄いな。
まさか、今も付けて来たりして……」
繁徳は、思わず後ろを振り返った。
「千鶴子さんとこ行く時は、凄く気を付けて、色々根回ししてるから大丈夫。
サトチンとプールに行くって言って出てきたから。
もちろん、サトチンには協力依頼済みよ。
女友達は、あたしん家の状況分かって同情してくれてる。
あたしが息抜きしたい時は、協力してくれるんだ」
「で、その舞のお母さんは、舞がピアノを続けるのに反対なんだ」
「ピアノを続けるってことは、今のあたしにとっては、音大へ行くってことなの。
でも、ママは、『あなたは成績も良いんだし、苦労して音大出てもピアノの先生止まりなら、将来のことを考えて、普通の大学行って他の可能性を探してみるべきだ』って言うの」
「親としては、ごもっともな意見だな」
「でも、あたしはピアノが弾きたいの」
「千鶴子さんも、舞には才能があるって言ってたじゃないか。
専門科の助言があっても、舞のお母さんは反対なのかな」
「たぶんね」
舞は力なく俯いた。