もてまん



「ママは、あたしが幸せだと嬉しくないの」



舞は、サラリとそう言った。


「嫉妬かよ」


「わからない。

小さい頃から、なんとなく感じてた。

ママは私が不幸だと喜ぶの。

小学校の徒競走でも、私がゴール間近で転んでビリになるでしょう、ママは満面の笑みで、『舞ちゃん頑張ったのにねぇ』って、とっても嬉しそうだった」


「残念がると、余計に可哀想って思ったんじゃない?」


「うぅん、違うと思う。

念願かなって一等とった年、確か小学校5年の時だった。

ママ、機嫌が悪くなって一人で先に帰っちゃった。

お弁当持ってよ。

あたしは、必死でママを探して、それでも見つからなくて、友達にお弁当分けてもらって食べたの」



繁徳は無言のまま、その話に聞き入った。
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