もてまん


(マジかよ、図星か?


母さんはあんなに信用してるってのに……)



正徳の動揺する様子を見て、繁徳も慌てた。


「母さん、そんなこと言ってるのか?」

「冗談だよ。

ちょっと、からかってみただけだよ。

でも、母さん、本当に心配してるよ、身体が疲れると、心も病むって。

ほら、過労性鬱病とか、最近多いじゃない」


繁徳はうまく焦点をぼかして、正徳の出方を待った。

正徳の視線は、また海の彼方に注がれる。


「そうだな、働くことだけが人生じゃないよな……」


遠くを見つめ、正徳がボソリと呟いた。


「随分極端だね」


繁徳は、釣り糸に視線を移し、正徳のその先の言葉を待った。
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