もてまん

「で、何なんだよ」

「千鶴子さんなんだけど」

「千鶴子さん?

帰って来たのか?」


「帰って来たらしいんだけど……

いないのよ。

あたし、土曜にマンションに練習に行ったの。

そしたら、居間にスーツケースがあって、帰って来たのかなって。

きっと、帰ったばかりで、何か食べ物でも買いに出てるんだろうって、その時はそう思って、夜、電話してみたの。

でも、誰も出なくて……」


「十時過ぎだったんじゃないか? 電話」


「ううん、ちゃんと九時少し過ぎくらい。

で、心配で、昨日も昼間に電話してみたの。

でも、同じ」


「一度帰って、また出かけたとか?」

「まさか!

あたし、心配で……」



舞の動揺が伝わってきた。
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