もてまん
千鶴子はしゃべりながらも、忙しなく手を動かしていた。
小さなカットグラスに水を張り、繁徳の持ってきた小さな花束を解き、グラスの中へそうっと移した。
「水をあげないとね」
無造作にグラスに入れられた花達は、きつく縛られたブーケの時より、何故か生き生きとして見える。
その花を眺める千鶴子の目は、何処か違う遠くを見つめているようだ。
そうこうしているうちに、砂時計の砂が下に落ち切った。
千鶴子は、カバーをとり、ポットのふたを開けて、中の葉を軽くひと混ぜした。
そして、またきっちりとふたをする。
それから、茶漉しを左手に持ち、右手でポットを持ち上げた。
千鶴子は二つのカップに、丁寧に、交互にゆっくりと紅茶を注いでいく。
その動作は、流れる音楽のようだった。
「さあ、どうぞ。ダージリンだよ」
「あたしはミルクを入れるけど、あんたはどうするかい?」
「僕もミルク、お願いします」
「クッキーもおあがりよ」
繁徳が蓋付きの籠を開けると、中にはナッツとチョコチップの沢山つまったクッキーが山盛り入っていた。