もてまん
診療棟のロビーは、四階ほどを吹き抜けた、大きなショッピングセンターのイベント広場のようだった。
天井からは、トップライトから自然光が降り注いでいる。
繁徳はくるりと辺りを見渡して、受付発券機の奥にあるソファを見つけ、そこに舞を座らせた。
「何か、飲み物買ってくる。ちょっと待ってて」
繁徳は自販機を視野に入れながら、舞に声をかける。
(甘い物がいいよな、こういう時は)
繁徳は紙パック入りのリンゴジュースのボタンを押した。
繁徳は席にもどると、ジュースの飲み口にストローを差し込み、舞に差し出した。
「ほら、これ飲めよ。
そっと持ってな。
紙パックのジュースだから」
舞は繁徳に言われるまま、ストローからジュースを吸い込んだ。
「嗚呼、美味しい、リンゴジュース」
舞の頬に少し赤みが戻る。
繁徳は、やっと安心して、舞の隣りに腰を下ろした。