もてまん
増田父娘
水曜日、三時。
繁徳はマンションの前で舞を待っていた。
だが、十分過ぎても、舞が現れる気配がない。
(もしかして、中か?)
繁徳は風除け室に進み、六〇一のボタンを押した。
「はい」
「舞? 俺だよ」
「今開けるね。
と……このボタンかな?」
カチッという音の後にドアが開いた。
(練習してたのか……そうだよな、これからレッスンだもんな)
エレベーターを降り廊下に出ると、六〇一の開いた扉の向こうから、舞が顔を出して外を覗いていた。
「ごめん、シゲ。
中に居るって、言い忘れた。
もしかして待ってた?」
「うん……でもすぐ気が付いた」
「レッスンは三時半からなんだ。
でも、オートロックの開け方とか、ちょっと不安だったし、お茶とか用意しておいた方がいいかなとか……色々準備がね」
舞は申し訳なさそうに、繁徳を部屋へと引き入れた。