もてまん
〈ピンポン〉
と、インターフォンの音が部屋に響いた。
舞が立ち上がって、インターフォンの受話器を取る。
「はい。お待ちしていました。今開けます」
舞が迷わず開錠のボタンを押した。
「シゲ、いらしたよ」
二人揃って、玄関に増田さんを出迎えに出る。
遠くから〈ピンポン、ピンポン〉と、二回ベルの音が響いた。
今度は玄関の呼び鈴だ。
舞がドアを開ける。
すると、扉の向こうには、増田ともう一人ご婦人が立っていた。
「こんにちは」
玄関の二人も、出迎えた二人の姿にちょっと驚いた様子だ。
「ごめんなさい。私は付き添いなの。娘の綾です。
今日は千鶴子さんがお留守でしょ。
父が若いご婦人と二人きりでレッスンはちょっと、って申すものですから……」
と、綾が二人に説明した。
(あぁ、この人は、店で司会をしていた女性だ)
「僕も、似たようなものです。
さぁ、どうぞ上がって下さい。
僕達は、あっちの居間で待ちましょう」
繁徳は増田と舞をレッスン室に促し、綾を居間に案内した。
「舞、換気扇付けろよ」
「あ……うん」
何だか、夢遊病者のようにフワフワした舞に、繁徳は思わず声を掛けた。