もてまん
「そろそろ、私達は失礼します。店の準備もありますので」
増田が、そう言って腰を上げた。
「増田さん、今日は本当にありがとうございました。
私達も片付けたら、そろそろ……ね」
舞は小さく会釈すると、同意を求めるように繁徳の方を向いた。
「繁徳くん、今日は楽しかったわ。
またお話しできると良いわね」
「そうですね」
綾と見つめ合い、小さく頷く繁徳を、舞が横目でチラリと確認する。
そのまま、二人を玄関まで見送った。
ドアを閉めたとたん、舞が真剣な顔付きで繁徳の方を振り返る。
「ね、綾さんと何の話ししてたの?」
(うわっ、出た、女の千里眼)
「何だよ」
「気になる。
増田さんのこと、何か言ってなかった?」
「何かって……」
「白状しなさいよ」
繁徳は少し躊躇しながらも、綾に聞いた増田の秘密を舞に打ち明けた。
「増田さんは千鶴子さんのこと愛してるんだってさ……」