もてまん
リハビリ
土曜日、一時半。
東京女子医大、西病棟Bの一階エレベーターホールで舞と待ち合わせた。
ここまで来れば、誰に見咎められることも無い。
「ごめんね、シゲ、こんな時間に。
あたし、この後、マンションでピアノの練習したいんだ。
こないだ増田先生に出された課題、ちょっと手こずっててさ……」
先に着いて、繁徳を待っていた舞が、申し訳なさそうに呟いた。
「いいさ、どうせ暇なんだ。
毎日早起きしてるから、時間持て余してるんだ」
「早起きって、何時?」
「六時」
「マジ?
そんな早くに何してるの?」
「走ってる。
それとトレーニング。
身体、鈍っちまったからな……」
「もしかして、早起きすればシゲに会える?」
「無理すんなよ。
舞にはピアノの練習もあるんだし」
「シゲはあたしに会いたくないんだ」
舞が上目使いに繁徳を見上げる。
「そんなことないけどさ。
予備校で会えるだろ」
「予備校じゃ、見てるだけだからさ……」
「……でも、まぁ、無理すんなよ」
繁徳は舞の肩に手を回し、少しだけ力を入れて引き寄せた。
舞の頭が、自然と繁徳の肩に寄りかかってくる。