もてまん



下階へ行くエレベータの扉が、開いた。



そこから降りてきたのは、増田だった。


(あっ、増田さんだ)


同時に彼の姿に気づいた舞が、驚いて繁徳から離れた。


「増田先生、千鶴子さんのお見舞いですか?」


ちょっと気まずそうに、舞が尋ねた。


「お二人お揃いで。

千鶴子様は今日、随分とご気分が良さそうですよ」

増田は、そんな二人を見ながら、嬉しそうに微笑んでいた。


「そうか、良かった。

じゃあ、もう面会謝絶も解けてますね」

「ええ、もう大丈夫です」


その声にも力がこもっている。


「僕達も千鶴子さんに会いにきたんです」


今度は隣りの上階へ行くエレベータの扉が開いた。


「じゃ、ここで失礼します」


二人は増田に頭を下げると、エレベータに乗り込んだ。


「千鶴子さんの生命力って、凄いんだね」

「ホント、あんな華奢な身体のどこにそんなパワーがあるんだろうな」


そんなことをお互い呟きながら、二人は手を繋いでいた。
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