もてまん


「七年前もあたしこの病棟の担当でね、千鶴子さんの手術の後、見てきたの。

やっぱり、ああやって、毎日自主リハビリやってらしたわ」


「大丈夫なんですか?」


「担当医師からは、まだ運動の許可は下りてないの。

でも、無駄よ、止めても。

『病院にいる間に無理しないで、何処でするんだい』って言われるだけ。

確かに、ここで倒れる分には、すぐ処置してもらえるしね。

ある意味、理にかなってるのかも。

それに、そのやり方で、前回も上手く乗り切ってこられたんだしね」


六〇八の病室から、舞が顔を覗かせた。

繁徳は手招きして舞を呼び寄せる。


「千鶴子さんは?」

「あそこだよ」


繁徳の指差す先に人影を見つけ、舞は直ぐに気がついて、千鶴子さんに小走りに駆け寄っていった。

二人は寄り添うように、一歩一歩、歩みを合わせ近づいてくる。

繁徳は二人が歩く姿を、じっと見守っていた。


「なんできみは行かないの?」


と、麗が尋ねた。

「なんだか、二人の時間を邪魔しちゃ悪いような気がして」


実際、繁徳の知らない時間を、あの二人はこうして共有してきたに違いなかった。
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