もてまん
退院
千鶴子は予告通り、ぎりぎり次の週の土曜日に退院を果たした。
増田と綾、舞と繁徳、そして千鶴子の友人の昌子。
みんなで千鶴子の退院を出迎えた。
間近で見る昌子は、千鶴子が〈お金持ち〉といっていたのが頷けるような派手な出で立ちだった。
薄紫色に染め上げた髪をふんわりと纏めて、首回りにフリルのある薄手の白いブラウスに艶のある黒のロングスカート。
胸元とふくよかな指には、小石ほどもある大きなダイアモンドが輝いていた。
でも、仏様のような柔和な顔立ちと柔らかな物腰が、そんな派手さをまるで普通の様に自然に感じさせる。
不思議な人だ。
毎日のリハビリのお陰で、軽く杖をついてはいるものの、千鶴子はしっかりと自分の足で歩いていた。
(成せば成るだな)
千鶴子のリハビリは、それこそ血の滲むような努力だった。
繁徳の受験勉強なんて、はっきり言ってお遊びみたいに思えてしまう。
繁徳は尊敬のこもった眼差しで千鶴子を見つめた。
増田が、千鶴子様と呼ぶ気持ちがなんとなく分かった気がしたのだ。