もてまん
麗が、一階まで見送りに出てくれた。
「くれぐれも、無理なさらないで下さいよ。
また、ここでお会いするなんて、まっぴらごめんですからね」
彼女は、ちょっと涙ぐみながらそう言った。
六人はロータリーに入ってきたタクシーに、三人ずつに分かれて乗り込んだ。
繁徳は後ろを振り返ると、麗が小さく手を振り見送る姿を、車が角を曲がって見えなくなるまでじっと眺めていた。
マンションに戻ると、部屋には大きな桶に入った寿司が届いていた。
「退院祝いだよ」
と、昌子が笑って言った。
「二度も天国の門から追い出された、チズさんに」
「ははは……」
と、千鶴子が声を出して笑う。
綾と舞が忙しく動き回る。
お湯を沸かしたり、お皿を並べたり、箸をそろえたり。
何だか手持ち無沙汰で、繁徳は増田と二人、ソファで小さくなっていた。
繁徳は、静かに千鶴子を見つめ、何か思い詰めた様子の増田を気にしていた。
千鶴子は、そんな増田の視線を無視するように、昌子と話をしている。