もてまん
食卓の用意が整い、みんなでお寿司の桶を囲んだ。
「千鶴子さん、退院おめでとございます!」
舞が席につくなり、千鶴子にお祝いの言葉をかけた。
「ありがとう、みんなには心配かけたね」
「ほんと、びっくりしたよ」
「でも、良かった、また戻ってこれて」
「そうだね、感謝しないといけないね」
「じゃ、千鶴子さんの健康に乾杯!」
繁徳がジュースのコップを高く挙げる。
「乾杯!」
と、舞がそれに続いた。
千鶴子は自分のお茶の湯のみを持って、増田と綾、昌子はビールを注いだグラスを持って、みんなが舞に続く。
「乾杯!」
ビールをぐっと飲み干すと、増田が静かに口を開いた。
「千鶴子様、私、今日から、こちらでご一緒に寝起きをさせていただこうと思います」
隣りに座った綾が、驚いた顔で増田に向き直った。
「お父様、どういうこと?」
「だから、今日からここで千鶴子様のお世話を……」
「その必要はないよ」
千鶴子はきっぱりとその申し出を断った。
「あたしゃ、一人で大丈夫だよ。
この通り、歩けるし、自分のことは自分でなんとかする。
あんたは必要ないよ」
(千鶴子さん、そりゃきついよ、その言い方は)
繁徳はハラハラしながら、思いつめた様子の増田を見つめた。