もてまん
「今回は、私も引き下がる訳には参りません。
もう決めたことですから。
千鶴子さまのご負担にならないよう私も考えまして。
午後から夜にかけては私も店がありますし、夜、こちらに泊めていただいて、少し遅い朝食をご一緒させていただければと思っております」
増田は、視線をきっちりと千鶴子に合わせて、一歩も引かない構えだ。
「それが良いよ。
ずっと一人は心配だし。
昼間は舞とか俺が来たりできるけど、夜一人って、やっぱり心配だよ」
繁徳が、我慢し切れず、話しに割って入った。
「千鶴子さん」
舞がすがるような目つきで千鶴子を見る。
「チズさん、しばらくの間だけでも、そうしたらどうかね」
昌子も、真剣な面持ちで千鶴子を見つめていた。
その中で、一人、綾だけが、静かにうつむいてショックを受けた様子で黙っている。
「あたしに選択の余地はなさそうだね。
でも、はっきっり言っとくよ。
あたしは自分のことは自分でできる」
「分かっております。
私はただ、ご一緒にいるだけですから」
そう言った増田の顔には、安堵したのか、少し赤味が戻っていた。