もてまん
舞の長い髪はぐしゃぐしゃだった。
所々、鋏で切られたような切り口が生々しい。
膝がすりむけ、服も乱れ、Tシャツには、やはり鋏で切られたような裂け目もある。
そして、右の肩に血が滲んでいた。
「やっぱり、怪我してるじゃないか」
「怪我はたいしたことないよ。あたしも見たがね」
千鶴子が落ち着きはらった様子で繁徳を見た。
「それより、精神的なショックの方が大きいんだ……
もう一時間近く、この調子なんだよ」
千鶴子は舞の身体を抱きしめながら、その無残に切り刻まれた髪を優しく撫でた。
「舞!」
繁徳は舞に呼びかけた。
舞の涙にあふれた瞳の中には、繁徳の入り込む隙間さえないようだった。
(俺はあきらめないぞ!)
「舞! 俺だよ、シゲだよ」
繁徳は必死で、何度も何度も舞に呼びかけ続ける。
「シゲ……」
舞の唇が小さく動いた。
舞の瞳の中に微かに光が戻る。
舞の細い手が、繁徳を求めて千鶴子から離れた。
繁徳はその手をしっかりと掴むと、ゆっくり舞を抱き寄せる。
「舞。
大丈夫。
俺がいる。
千鶴子さんもいる」
うん、うんと舞が頷く。