もてまん
「正気に戻ったみたいだね。
良かった……
温かいミルクでも飲むかい」
千鶴子が、ゆっくりとした動きでキッチンに入っていった。
繁徳は舞をしっかりと抱きしめ、舞の耳元で優しく囁いた。
「舞、兎に角、座って」
抱きかかえるように舞をソファに座らせる。
ほどなく、千鶴子が大きなカップに温めたミルクを持ってきてくれた。
「薬だと思ってお飲み。気持ちが落ち着くから」
舞はカップを両手で持ち、ゆっくりとミルクを啜った。
「嗚呼、甘くて美味しい……」
湯気の立ち上るカップの向こうから、舞の呟きが漏れる。
「落ち着いたかい?
あたしゃ、あんたが、もうこっちへ戻ってこないんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。
やっぱり、愛の力は凄いね。
こんな頼りない繁徳でもね」
千鶴子が、感心したように繁徳を眺めた。