もてまん
「あたし、シゲの声が聞こえて……」
「人間の心ってのはね、時には強く、時には弱いものなのさ。
壊れてしまうこともあるんだよ」
「あたし、壊れかけてた……」
「そうだね。
舞さん、何があったのか、話せるかい」
舞はミルクをもう一口飲み込むと、カップを両手で持ちながら震える唇で呟いた。
「あたし、逃げてきたの……」
「誰かに襲われたのか?」
驚いて繁徳が言葉を挟む。
舞が大きく頭を横に振った。
「夕方、サトチンからメールが入って、『ゴメン、ばれたみたい』って。
ここんとこ、毎日のようにここに来てたでしょ。
ママが勘ぐってサトチン家へ電話したみたいなの。
そろそろヤバイナって、あたしも思ってたから、色々言い訳考えながら家に帰ったの」
舞はそこまで一気に話すと、またゆっくりミルクを啜った。