もてまん

「ママは、

『外に出れなくしてやる!』

って、あたしの髪を掴んで切ったの。

あたし最初、何されてるのかわからなくて……

床にあたしの長い髪が切り落とされて……

あたし抵抗して、

もみ合っているうちに鋏が肩に当たって、

血が出てびっくりして……」


舞は、大きな瞳をつぶったまま静かに咽び泣いた。


「逃げなくちゃって、

あたし必死で走って、

ママから逃げてきたの」


親を捨てきれない、舞の悲しい魂の叫びが聞こえた。


舞は逃げたことを悔やんでいる。

母を置いて逃げてきた自分を責めている。


(でも、そんなとこにいてどうなるんだ。

舞、現実を見ろよ!)


繁徳はあふれ出る舞の涙を、その手でそっとぬぐった。
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