もてまん
「繁徳、そこの引き出しに鋏があるはずなんだが、取っておくれ」
千鶴子は、もうすっかり髪を切ることに意識を集中しているようだった。
繁徳に床に新聞紙を敷き詰めさせると、舞をその中央に置いた椅子に座らせた。
そして、櫛と鋏を交互に動かしながら、器用に舞の髪を切りそろえていく。
あっという間に、舞の長い髪は短くなった。
一番短く切られた髪が肩よりも上だったので、それに合わせて短く切りそろえられたのだ。
舞は鏡を見て、ちょっとショックを受けた様子だった。
(でも、舞、短い髪も良く似合うよ)
「舞、ショートも似合う。もっと短くてもいける」
繁徳は舞の髪を優しく撫で、その気持ちを言葉に表した。
「シゲがいいならいいや。
あたしを見るのはシゲだから」
「はは……それは言えてるね」
千鶴子が二人を見て嬉しそうに言った。
「舞さん、今日はここに泊まるといい。
あたしの部屋で一緒にね。
その前にシャワーを浴びなさい。
肩はかすり傷だけど、一応消毒して、手当しないとね」
「走ってる時、転んじゃって、こっちの方が痛いんです」
舞が血の滲む膝を抱えた。
玄関についてた血は、この膝の傷から出た血だったようだ。
赤く血が滲んだ膝から、足の裏近くまで血が垂れていた。