もてまん
「繁徳、今日は遅かったのね。
お父さん、今日は珍しく早かったから、一緒に食べられたのに、残念ね」
「あ、うん、ちょっと用事あってさ」
「バイトは月水金よね」
「あ、今日はバイトじゃない」
「あなたも無理しないでね、朝も早くから起きてるみたいだし」
「うん」
繁徳は、幸子がせわしなく夕食の支度をするのを眺め、席についた。
二人に千鶴子のこと話すべきか、繁徳は迷っていた。
ついでに舞のことも。
これから何が起こるか判らない。
信頼できる人に事情をわかってもらっておくのは大切な事のように思えた。
「父さん、盆の墓参りの時、婆ちゃんの弟の繁さんのこと話してくれたよね。
そのお嫁さんのことも。」
繁徳は二人に、今まで起こった全てを話しておこうと決意した。
「あぁ、そうだな」
「俺、その繁さんのお嫁さんだった人に会ったんだ」
「もう何十年も前の話だぞ」
正範が、信じられないと言う顔で繁徳を見た。