もてまん


「神父様が母さんを助けてくれたの?」


「そういうことになるかしらね……

母さんを見つけた神父様は、母さんの話しを本当に時間をかけて、じっくりと聞いて下さったの。

私は母の思い通りの人生を生きるために生まれてきたんじゃない。

これから大学へ行ってもっと勉強たい。

他の世界を見てみたいって、必死で訴えた。

そして母さんの話しを一通り聞き終わると、神父様は静かにこうおっしゃったの、

『子の幸せを願わない親はいませんよ。お母様のために一緒に祈りましょう』って」


「随分悠長だな」


「そうね、母さんもその時はそう思った。

母が私の幸せを願ってるなんて信じられなかったし、何のために祈るのか分らなかった」

「でもね、隣りで静かに目を閉じて祈ってらっしゃる神父様の姿を見ていたら、

興奮していた気持ちも何だか収まってきて、

嗚呼、神父様はあたしのためにも祈ってくださってるんだって思えてきたの。

で、神父様なら信頼できる、神父様のおっしゃる通りにしようって」


「ふぅん」


繁徳は、幸子の話を聞きながら、なんだか千鶴子と舞の関係に似ているなと感じていた。
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