もてまん
ことの顛末


次の日の金曜、舞は予備校を休んだ。


着の身着のままで飛び出してきた舞にとって、それは無理も無いことだった。


(今日は髪でも切って、ゆっくりするといいんだ)


いくら千鶴子が上手と言っても、あのザンバラ髪じゃ、あんまり舞が可愛そうだと繁徳は思った。


繁徳はいつもと変わらず予備校へ行き、授業を受ける。

いつもと変わらない日常。

が、舞の姿だけがそこに無かった。

休み時間、佐藤理沙、通称サトチンが繁徳に声を掛けてきた。


「黒澤くん、舞のこと、何か知ってる?」

「北島がどうかしたのか?」


繁徳はとぼけて答えた。

サトチンと舞は仲が良いようだけど、昨日の今日だし、用心するに越したことはない。


「今日、舞、休んでて……」


心なしか、サトチンの声が沈んでいるように感じた。


「風邪かなんかじゃないのか?」

「違うと思う。

でも、知らないんなら、いいんだ」

「何だよ、そっちから聞いてきたんだぜ。

どういうことだよ、それ」


思わせぶりな物言いに、繁徳は少しだけむっとした。
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