もてまん


「で、予備校の様子どうだった?」



舞が急に真面目な顔つきで繁徳に尋ねた。


「どうって」

「あたしのママ、探しに来てなかった?」

「舞のママって、俺、顔もわかんないし……」


そう言えば、帰りがけ、事務室の前に中年の女性が立っていた。

あれが舞の母親だろうか?

今となっては確かめる術もない。


「それより、サトチンが俺んとこに、舞のこと聞きにきた」

「サトチンが?」

「なんでも、昨日の夜中に舞のママから携帯に電話があったんだってさ。

凄い剣幕だったらしい」


「サトチンには悪いことしちゃったな」


「大丈夫じゃないか。結構楽しんでるみたいだったし」


「えっ、そうなの?」


「舞は今頃、男とランデブーだって言ってたぜ」

「あたしが?」


と、舞が噴出すように笑う。


「シゲとランデブーも悪くないね。

シゲ、どうする?

今からでも遅くないよ」


舞がじっと繁徳を見つめた。

その時、千鶴子が舞の真剣さを汲み取るかるかのように、口を挟んだ。
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