もてまん


(いつも、だけど、強引だな)


万事上手くいっている、という言葉の向こうに何があるのか、繁徳には皆目検討がつかなかった。


(ま、行けばわかるか)


千鶴子のマンションには、舞と綾がいた。

増田は、もう店の準備に出かけたのだそうだ。


「で、どうなったんだよ?

舞がここにいるってことは、上手くいったってことだとは思うけど」


なんか三人とも落ち着いて、繁だけがのけ者にされているように感じた。


「フフ……おじ様、カッコ良かったんだよ」


と、舞が嬉しそうに笑う。


「あの後すぐの日曜、おじ様、私の両親に会って説得してくださったの。

自分で言うのは恥ずかしいんだけどね、

『舞さんにはピアノの才能がある。

偶然、私の店でお会いして、彼女の演奏を聞く機会を得たことを神に感謝しています。

彼女は五十年、いや百年に一人、出るか出ないかの逸材です』って」


舞の顔が、薄っすらと赤らんだ。


「あら、本当よ」


綾が、さらりとそう言った。
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