もてまん
「で、舞は今どこにいるのさ。予備校はどうするんだ?」
「あたし、今、綾さんと一緒に強化合宿中なの。
朝から晩まで、ピアノ三昧。
で、予備校は辞める。
行ってる暇、ないんだ」
「センター試験、受けるってのは?」
「それは大丈夫。
あたし、英語と古文、得意だから。もう申し込みはしてあるし」
「……サトチンには連絡したのか?」
「うん。
昨日、手紙書いた」
(手紙ね。成る程、その方が色々聞かれなくて済むしな)
「シゲに会えないのだけが淋しいな」
舞が呟いた。
「なぁに、来年三月までの辛抱さ。
だいたい、あんただって、受験だろ、繁徳?」
千鶴子が、舞の言葉をバッサリと切り捨てた。
「まあ、その方が勉強集中できるかな。
俺、理系に変えたし。
今、猛勉強中だよ」
繁徳もそこは、同意するしかなかった。