もてまん



朝十時のマンションには、まだ増田さんがいた。



「おはようございます」

「お二人、お揃いで。おはよう」


「千鶴子さん、朗報。

シゲ、合格!」


舞がはしゃいで、Vサインを出した。


「ほぅ、やったじゃないか」


千鶴子が驚いた声を出す。


「だから、死ぬ気で頑張ってるって言ったじゃないですか」

「舞さんの方は、ちっとも心配してないけどね、あんたは心配だったんだよ……」

(何だ、千鶴子さん泣いてんのか? 大げさだな)


目を潤ませる千鶴子の横で、増田が優しくその様子を見守っていた。

千鶴子が増田を見て、小さく頷く。


それを合図に増田は静かに立ち上がると、リビングボードの引き出しから、封筒を取り出した。


「これ、千鶴子様から、お二人へのプレゼントです」


そう言って、彼はその封筒を二人の前に差し出した。
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