もてまん


「えっ」

と驚く繁徳に、千鶴子は真面目な顔で向き合った。



「合格祝いだよ。

念願のランデブー。

舞さんの発表は十三日だからね、その前に行っといで」


(舞の合格は確実ってことかよ……)


それにしても、合格祝いにランデブーとは、普通じゃ考えられない発想だ。


「千鶴子さん、舞の保護監督者じゃなかったんですか?」


繁徳は舞と抱き合う姿を咎められた、あの日のことを思い出す。


「その役目は綾さんに譲ったからね。

今のあたしゃ、只のお節介婆さんさ」


千鶴子は、そう言うと楽しそうに笑った。

封筒の中には、二人分の往復のJALのチケットと沖縄リゾートホテルの宿泊クーポンが入っていた。


「ランデブーだからね、遠くじゃないと。

それに寒いところじゃ雰囲気出ないだろ?」

「千鶴子さん、ありがとう」


舞が千鶴子にそっと抱きついた。


「繁徳、上手くやるんだよ」


千鶴子の言葉に合わせるように、隣で増田が軽く繁徳に向かってウィンクをした。


(何だよ、それ。また千鶴子さんのお膳立てかよ)


俺の都合はどうなるんだ、と繁徳はちょっとむっとしたが、喜ぶ舞の顔を見ていると、拒むわけにもいかない。


(まぁ、いいか……約束のバージン喪失旅行だ)
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