もてまん
舞は旅行から帰って、ずぅっと泣きじゃくっていた。
自分の合格が決まっても、その涙は早々枯れることはなかった。
増田は、覚悟していたかのように落ち付いていた。
綾は、そんな父親を静かに見つめていた。
昌子は、抜け殻のように一人たたずんでいた。
繁徳は、何だかまだ千鶴子が側にいるような気がして、現実を受け止め切れないでいた。
千鶴子が繁徳に語った繁とジョセフィーヌの話と同様、千鶴子の葬儀も遺言によって速やかに執り行われ、彼女の身体はあっという間に灰になった。
そして、千鶴子の希望によって、遺灰は二つの壷に分けられた。
一つはフランスの繁の元へ。
そしてもう一つは多磨霊園にある繁の墓所に。
もちろん、繁徳の両親はその願いを、何のわだかまり無く受け入れた。