もてまん
「シゲのそういうとこが好き。
でも、帰るなんて言わないでよ。
今はシゲが目の前にいる。
だから一緒にいたいし、抱かれたい。
それがあたしの正直な気持ち」
舞がしっかりと繁徳を抱きしめる。
舞の温もりが、硬く身構えた繁徳の心をゆっくりと溶かしていった。
「それにね、あたし、千鶴子さんから言われたの。
『欲情に溺れた男は獣と同じだ』って。
『たとえそれが繁徳でも自分の身を守ることが大切だよ』ってね。
だから、あたしシゲが本当に獣になったら、その時は逃げるよ」
舞は嬉しそうに笑った。
(何だよ、千鶴子さん。何時まで、俺と舞の関係に口挟む気だよ)
「何か、千鶴子さんに空から見られてる気分だな」
繁徳は空を見上げて呟いた。
「そうだといいなぁ」
舞の言葉は、空に向けられた。
舞と二人、星の見えない都会の夜空を仰ぎ見る。
それでも星はそこにある。