もてまん



(何だ、これ?)



それは千鶴子が、繁徳に残した遺言。

その理由が、このCDを聞けば判るというのだろうか。



繁徳はCDのケースを乱暴に開くと、オーディオにぶち込んだ。

ジィジィという雑音の後に続いて、千鶴子の声がスピーカーから聞こえてきた。


「繁徳、あんたがあたしの声を聞いてるってことは、あたしはもう死んでこの世にはいないってことだね。

あたしの心臓は、どうやらもうそう長くはもちそうにもない。

だから、あんたに言い残したことをこのテープに吹き込もうと思う。

まぁ、これはテープじゃないがね。

なんでもボイスレコーダーとかいう最新の機械なんだそうだよ。

……本当にこんなちっこいもんであたしの声が録音できるのかね……」


繁徳は千鶴子の懐かしい話しぶりに、何だか嬉しい気持ちになっていた。


(千鶴子さんがまるでこの部屋にいるみたいだぜ)


千鶴子の話は続く。
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