もてまん
「あたしと昌子さんの契約の話は以前しただろう?
あたしの命が、そう長いことないとするとさ、マンション売って、少しばかりはお金が残る算段なんだよ。
今の不況で、このマンションもそう高くは売れないとは思うがね。
で、昌子さんとも相談して、マンション売って、借金を差し引いて、もし残りが出たら、あんたにそれを残したいって思ってね。
元は繁さんの遺産で買ったマンションだし、あんたにも受け取る権利はあると思う。
まぁ、お金はあって邪魔になるもんじゃない。
たいした額にはならないかもしれないが、あんたの必要な時に使ってくれれば嬉しいよ」
後ろで、〈ピンポン〉とインターフォンの音が聞こえた。
慌ててスイッチを消すガサガサという音。
(嗚呼、千鶴子さんは、マンションで一人、毎日こんなことして過ごしていたのか)
続いて、また千鶴子の声が流れる。