もてまん
「繁徳、あんたに一つ謝らなきゃいけないね。
〈もてまん〉の話。
ありゃ、あんたに声を掛ける時、思わず頭に浮かんだその場しのぎのあたしのでっち上げだよ。
でも、あの時、あんたに声を掛けなきゃ、今のあたし達の関係はなかった。
そして、フランシスやジャック、繁さん、あたしの愛した男達の話をすることもなかった。
そう考えるとさ、〈もてまん〉ってのは、あたしが愛した男達のことだったのかもしれないね。
それには、勿論、あんたも含まれるよ。
色恋沙汰の愛じゃないがね。
愛っていうのは、案外幅が広いもんなんだよ」
(千鶴子さんの愛した男の中に入れて貰って光栄だよ)
繁徳はちょっと複雑な気持ちになる。
(その中に、増田さんは入らないのか?)
「この話は、舞ちゃんにもしていない。本当は死ぬまであたしの心にしまって置くべきなのかもしれないがね。
何だか、話すと気持ちが楽になるような気がするから、あんたにだけは話しておく。
でも、他の誰にも内緒しておくれよ」
繁徳は次に流れ出てきた、千鶴子からの秘密のメッセージにドキリとした。
(俺だけに?)