もてまん
「なんだい、その顔は?」
繁徳が少しだけ顔をしかめたのを、千鶴子は見逃さなかった。
「えっ、だって、フランシスって男の人でしょ。
なんか恋愛話的な展開だな……って」
「あんた〈もてまん〉の話を聞きにきたんだろう?
フランシスはあたしの言う〈もてまん〉の一人さ。
恋愛。
結構じゃないか。
この世の中、男と女しかいなんだよ。
お前さんも、いい歳して恋愛話を避けて通るようじゃ、まだまだ青いね」
そう言って、千鶴子はニヤッと笑った。
「青いって……」
繁徳は千鶴子の勢いに、ちょっと腰を引きかけた。
「まぁ、もう少し、黙って続きをお聞きよ」
千鶴子はピシャリとそう言うと、また少し遠くを見つめるように話し出した。