もてまん
「会って初めて、ですか?」
繁徳は思わず、うわずった声で聞き返した。
「初めて会った訳じゃないさ、前からの顔見知りだよ。
そんなに驚くことかね?
男女の仲なんてそんなものさ。
ある日突然、相手が恋しく思えたりするものなのさ」
「そんなものなのかなぁ」
繁徳には目の前の年老いた千鶴子と、そんな情熱的な行動が直ぐには結びつかない。
「で二人は恋人同士になって、いつからともなく一緒に暮らし始めた。
あたしは狭いアパルトマンを引き払って、二人でね、キッチンと居間が付いた広い部屋へ移ったのさ」
繁徳の目の前には、頬を少しだけ赤らめ、少女のように輝く瞳をした千鶴子がいた。