もてまん
フランシスはいつでも真直ぐで、気持ちを隠さない人だった。

反対にあたしは、どうも気持ちを隠す傾向があってね。

すれ違いが多くて寂しい日が続いても、あたしは寂しいって素直に言えなかった。

フランシスは何故かそんなあたしの様子に気付いてね、花束を買っては店に届けてくれたものさ。

小さなメッセージカードにね、


〈いつも君を愛している、君のフランシスより〉


って書いてあって。

はずかしくないですか? だって?

何言ってるんだよ、女はそういう素直な言葉に弱いものなんだよ。

寂しい気持ちがいっぺんで吹き飛んで、ますますフランシスが好きになった。

フランシスは、いつもこんなことも言ってたね。


『僕は、君そのものを愛してるんだ。君が、君であることが僕の喜びだよ』

ってね。

そして、あたしが歌うのをとても喜んでくれていた。

あんなでかい図体なのに、一度も声を荒げることもなく、優しい人だったよ。

ほんとに強い男は、優しいのさ。

幸せだったんだよ。

ほんとにね。
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