もてまん
(何だ? この反応は?)
「違う、違う」
繁徳は、慌てて否定した。
「親の用事で、親戚の年寄りのところに届け物」
繁徳は、わざとダルそうに不貞腐れてみる。
「そんなダサい約束、すっぽかしなよ。カラオケ行こうよ」
繁徳は、舞がこんなに真剣に誘ってくれるのが嬉しかった。
が、約束は約束だ。
「だって、婆さん、楽しみに待ってんだぜ、俺が行くの……断れないよ」
(千鶴子さんが親戚かどうかなんて、こいつらには判りっこない)
と思いながらも、後ろ目たい気持ちがよぎる。
(おまけに、楽しみにしてるだなんて……)