もてまん
「だいたい、その『もてまん』ってのは、何のことですか?
たんにもてる男って意味ですか?」
繁徳は、面倒臭そうに聞き返す。
「ふふん、興味あるのかい?」
「いや……そういうわけじゃ……」
老婦人はサングラスを右手で少し下にずらすと、上目使いに繁徳を見上げた。
サングラスの下のその目は以外に大きく、くっきりとアイラインが引かれ、ショールと同じ紫色のアイシャドーがうっすらと塗られている。
「あたしは、い・わ・し・た・ち・ず・こ。
怪しいものじゃないよ。
この先のマンションに住んでる年寄りさ。
気が向いたら、連絡おくれよ」