もてまん


「だいたい、その『もてまん』ってのは、何のことですか?

たんにもてる男って意味ですか?」


繁徳は、面倒臭そうに聞き返す。


「ふふん、興味あるのかい?」

「いや……そういうわけじゃ……」


老婦人はサングラスを右手で少し下にずらすと、上目使いに繁徳を見上げた。

サングラスの下のその目は以外に大きく、くっきりとアイラインが引かれ、ショールと同じ紫色のアイシャドーがうっすらと塗られている。


「あたしは、い・わ・し・た・ち・ず・こ。

怪しいものじゃないよ。

この先のマンションに住んでる年寄りさ。

気が向いたら、連絡おくれよ」
< 6 / 340 >

この作品をシェア

pagetop