もてまん
土曜の朝
繁徳は髪を切った。
千鶴子に指摘されたことが、きっかけではあった。
夏になり長い髪が暑苦しくなった、と言う正当な理由もあった。
髪を切ると、気分まで軽くなるものだ。
まるで高校生だった時の自分に戻ったような、わだかまりが少し吹っ切れた、そんな不思議な気分を繁徳は感じていた。
土曜日、予備校は休みだというのに、繁徳は何だかそわそわして早く目を覚ました。
時計はまだ八時を指している。
が、七月ともなるともう陽は高い。
窓からは太陽がサンサンと照りつけていた。
今日も、暑い一日が始まる。
繁徳はこんな日にカラオケへ行く舞たちのことを考え、ちょっと可笑しくなった。
(……プールだったら、行っても良かったな)
もし今日、プールへ行くと誘われていたら、繁徳は千鶴子との約束なんてすっぽかしたに違いない。
カラオケというよりは、むしろプール日和。
繁徳はにやけながら考える。