もてまん
「この花まだ元気ですね」
「手入れがいいからね」
「毎週あんたが来ると、グラスが足りなくなっちまうね」
そんな憎まれ口をききながら、千鶴子は小さなグラスに移した花をテーブルの上に置いた。
(毎週来て欲しいのかな? それとも……)
二つ並んだグラスの花を眺め、繁徳は何だか奇妙な気持ちになる。
「今度来るときは、何か違うものにします」
繁徳は思わずそう口に出していた。
「そういう意味じゃないよ。
あたしも、一言多いね。
誰かが訪ねて来てくれるってのは、嬉しいものなのさ。この歳になると、特にね。
それにね、花束はいくつもらっても嬉しいものだよ」
千鶴子は、丁寧にカップに紅茶を注ぐと、籠に入ったマフィンを繁徳にすすめた。
「うわぁ、これも美味しいです」
「混ぜて焼くだけだけだけどね。これもあたしの究極のレシピのひとつさ」
千鶴子は、マフィンを二つに割ると、中を確かめるようにじっと覗き込む。
そしゅて、頷くように納得して、その半分を口に入れた。
「まあまあの出来だね」
千鶴子は、どこまでも自分に厳しさを追求する性質なのだ。