もてまん
「さあぁて、先週はどこまで話したっけ?」
千鶴子が、弾んだ声で聞いてきた。
「あの~、フランシスと別れたとこです……」
繁徳は千鶴子の顔を覗き見る。
(大丈夫かな?)
繁徳は、千鶴子の感情が高ぶらないかと心配だったのだ。
「そうだったね……
大丈夫、今日はちゃんとシュミレーションしたからね。
なんたって、先週はあの後、一晩と半日泣き暮らしたから……」
「ほんとですか?」
「後から後から、細かい出来事まで想い出してね、泣けたよ。
でも、久々に思い出してさっぱりした。
この歳になってもね、後悔ってものはあるんだよ。
振り返っても仕方のないことだけどね……」
千鶴子の口調は、何処か吹っ切れたように淡々としていた。
そして、また、千鶴子の想い出話しが始まった。