もてまん
思い出話 繁
「ちょっと待ってください。
坂井繁って日本人ですよね?
知り合いですか?」
繁徳は、急な話の展開に、千鶴子の話に割って入った。
「いや、全然。初めて聞いた名前だったんだよ」
「また、千鶴子さん勿体ぶってないで教えてくださいよ。
だってキキョウって、千鶴子さんの好きな花でしょう?」
そう言いながら、繁徳はテーブルの上に飾られたキキョウの花をじっと見た。
「話には順序、ってものがあるんだ。
急かさないでおくれよ。
あたしがキキョウの花が好きなのも、坂井繁って男があたしにとって重要な人物だってことも、これから順を追って話していくからさ」
そして、千鶴子の瞳もキキョウの花に注がれた。